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生産者インタビュー(2015)

No.01 ~奈良の伝統野菜“大和まな”を年中味わってもらいたい

UEDAなっぱ工房/代表 上田 喜章氏

UEDAなっぱ工房/大和高田市
代表 上田 喜章氏

奈良県中西部に位置する大和高田市。最寄駅からほんの少し歩いたところに緑で覆われた畑が広がる。シェフやスーパー、消費者のニーズを満たすべく、奈良県の伝統野菜の一つである“大和まな”を一年中生産する「UEDAなっぱ工房」上田さんにお話を伺った。

奈良食材の生産者インタビュー

ー まず基本的な質問から、なぜ伝統野菜の“大和まな”を作るようになったのですか

上田:実家が元々農家で、奈良県で生まれ育った私にとっては小さな頃から馴染み深い野菜なんです。当時からそれほど生産量の多い野菜ではなかったのですが、“伝統”野菜、珍しい野菜という印象はないんです。県外ではまだまだ認知も低く、食べ方も浸透していません。種も少ないので広がり難い野菜ですが、さっぱりとした味で、奈良県民の味覚に合った野菜だと思っています。

ー “大和まな”を通年栽培するのは珍しいですよね。

上田:確かに、年中作っているのは私達だけでしょうね。“大和まな”は暑さに弱く、病気にもかかり易いため一般的に冬が旬の野菜とされています。また収穫後は、緑色が黄色く変色しやすいので、他の人は作りたがらないんですよ。我々は、お客様やシェフのニーズがあるため作り続けています。もう一つの理由としては、他県で作られていない伝統野菜のゆえの悩みを解消する為といいますか、そんな理由からも作り続けているんですね。

ー 詳しく教えて頂けますか。

上田:はい。全国的に作られているメジャー野菜は、南は九州、北は北海道までと、日本列島を縦断するように栽培適地が季節ごとに北上、もしくは南下していきますよね。そのため、トマトにしても、キュウリにしても、レタスにしても大体年間を通じて様々な産地から寄せ集めて、売り場の同じ場所に同じボリュームで野菜の量をキープすることができます。しかし、奈良県だけで作られている野菜は、供給できる期間が限られてしまいます。そういった野菜を売り手が扱いづらいと感じてしまうんですね。

ー なるほど、シェフのニーズに加え、“大和まな”の棚割を維持することで、一般の消費者が使いたい時にいつでも買えるような状態を維持することも一つの使命と考えていらっしゃるわけですね。少し意地悪な質問かもしれませんが、冬が旬の野菜という事は、味も冬のほうが美味しいのでしょうか。

上田:確かに甘みが強いのは冬ですね。逆に、夏場の“大和まな”には程良い辛みがあります。ピリッと、さっぱりした味です。パスタに使ったり、漬物やお浸しにしたりと、食欲が低下しがちな夏場にはぴったりだと言えますね。

ー 畑で摘みたてを食べさせて頂きましたが、仰るとおり「ピリッ」としていて爽快感がありました。それに、味がする。いわゆる、葉野菜の味はもちろんですが、塩っけを感じるといいますか、味があるんです。例えるなら、昆布の風味が付いた、浅漬けのお漬物を食べている感覚なんですね。一切、味付けしていないのに、驚きました。

上田:畑の味というか、土に由来する味なんでしょうね。ですから、同じ“大和まな”でも作り手によって味は違いますよ。もちろん、同じ私が作っても、畑の場所によっても味が違う。ですから、シェフの要望を受けて、同じ“大和まな”でも柔らかいものや辛味の強いもの、背の高いものなどニーズに合わせて出荷しているんですね。

UEDAなっぱ工房

ー 同じ作り手でも味が違うんですね。レストランのシェフって、野菜に対して注文が多いのですか。

上田:そうですね。こだっていらっしゃるシェフは多いです。実際に畑に来て下さって、野菜の試食は勿論、土まで食べるシェフもいますね。

ー 土を食べるんですかっ。

上田:はい。土を触って、状態を目で見て、味わって・・・。葉野菜の根っこの部分だけ欲しいというシェフもいますしね。東京や大阪といった県外で評価して頂いた結果、奈良県内のシェフも奈良県の食材に興味を持って頂けるようになったんですよ。

ー 評価の逆輸入という現象ですね。

上田:奈良県民は日本国民の縮図だと感じています。つまり、自国(奈良県)に対する誇りや評価が絶対的に低いんですね。海外(東京や大阪などの他府県)から評価されて、初めて自国(奈良県)に対して自信が持てるし、自国(奈良県)の価値を語れるようになるんですね。

ー 私も最近、県外から奈良県に移り住むようになりましたが、同じように感じます。一方で、自分達の事をPRする事が苦手というか、そもそも好まない県民性のためか、近隣の近畿圏でも奈良の良さを知る機会が少ないように思います。奈良県に来てから、奈良の「食」や「文化」、「観光資源」の価値を知った部分も大きいですね。

上田:そういった意味で、シェフェスタの様な県外からシェフを呼び奈良県産の食材をPRしてもらえるイベントは価値があると思いますよ。

ー ありがとうございます。前回6月の「シェフェスタin奈良」では、京都の魏シェフが「牛肉と“大和まな”の汁そば」で上田さんの“大和まな”を使って頂きました。奈良県内でお取引のあるレストランがあれば教えていただけますか。

上田:前回の「シェフェスタin奈良」に出店してくださっているところだけでも、「アコルドゥ@富雄(川島シェフ)」、「BEKKAN PIATTO@奈良(山嵜シェフ)」、「Natura@学園前(野村シェフ)」など、多数ありますよ。“大和まな”をシェフがイベントで目の前で調理し、使って下さる事で、一般の消費者の方も身近に感じて頂ければありがたいですね。

ー ちなみに、上田さんのお野菜はどこに行けば購入できるのですか。また、“大和まな”はどのようにして食べると美味しいですか。

上田:“大和まな”や小松菜、白菜などの葉野菜は奈良県内の主要スーパー(イオン、オークワ、関西スーパー、ライフなど多数)で取り扱っていただいています。それ以外にも近隣の直売所にも置いています。一般的には油揚げと一緒に炊いていただいたり、お浸しにしていただいたり、お漬物にして食べることが多いようですね。最近では、家庭の食卓でも洋風化が進んでいますので、パスタやオムレツの具材として使っていただいたり、生で、サラダや、グリーンスムジーなど、使い勝手は良いと思います。

ー 葉野菜以外にもレストランから要望を受けて色々なお野菜を作っていらっしゃるんですよね。

上田:日本では珍しいアーティチョークという野菜やオレンジや紫色の珍しいカリフラワーなんかも作っています。今の時期(取材時7月中旬)はトマト、万願寺唐辛子、茄子、キュウリ、ズッキーニ、かぼちゃ、ゴーヤなど、レストランからの要望に合わせて色々と栽培しています。それに、今年の冬から出荷できると思うのですが、軸の赤い“大和まな”も作っています。是非、楽しみにしていてください。

ー 今から楽しみです。本日はありがとうございました。

UEDAなっぱ工房

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